
その他の獣毛について
ビキューナ (Vicuna)
世界最高級の天然繊維といえば、このビキュ-ナをおいて他には 有りません。 今では幻の繊維といえそう です。
生息地は、アルパカと同様なアンデス山脈の高地で 生息しています。
種はアルパカ属リャマ科で、カモシカに似た小さな野生の 動物ですが高地に住む動物なので家畜化することが不可能です。
性質も粗暴なため飼育することが出来ません。
冷たく乾燥した空気の山岳地帯で昼と夜の激しい 温度差を刺毛・ ウブ毛でコントロールする為、ウブ毛は極めて細く(天然繊維中 一番細い)柔らかいので衣料繊維の中でも最も高価です。
最近では絶滅を防ぐ為、ワシントン条約によって国際的に 保護をされ、その毛を商業目的で入手する事が出来なく なりました。
品質は、カシミヤより繊度が細く(10~14µ、)光沢もあり、 デリケートな柔らかさの上、希少価値から世界的に織物として 珍重されています。
キャメル (Camei)
キャメルはラクダ属ラクダ科の動物で、主要国は中国、ソ連、 チベット、イラク、イランなど、主として中央 アジアの 砂漠地帯に生息しています。
採毛は、年一回に晩春から初夏の脱毛期におこないます。
原毛の色は、いわゆるキャメルカラーで、普通は染色をしなく そのまま用いられます。
軽量で保温性に富んでいるため、その需要は多くなっていますが、 生産量が少ないので貴重品とされています。
染色技術の向上で、キャメルカラーを脱色し再度染色する方法が ありますが、繊維が著しく痛める為、多少 キャメルの性質が 変わります。
アジア系の双峰種(ラクダ)から採取、剛毛と柔毛があり、 長さは50mm~65mmで太いです。
スケ-ルも捲縮もありますが、手触りが極めて良好です。
アンゴラ (Angora)
アンゴラ兎の毛で、アンゴラ山羊のように白く長い毛を持っている 兎ということから、その名がつけられたといわれます。
わが国では中国産が多く消費されています、
つぎはチェコスロバキア・フランス・アルゼンチン・韓国です。
最近では、紡績技術の向上で、アンゴラの高率混紡品が 多く出回る様になりました。
紡績は羊毛だけでなく、生糸、綿などとも混紡されています。
特に「ミンク加工」と呼ばれる表面に毛羽の出た豪華な 感じの製品もよくみられます。
長さは1年1回の煎毛のものが約10~13cmになります。
太さは0,01~0,03mm位、色は純白です。
しかし、クリンプが殆どなく、スケールもほとんどない為、 可紡性に乏しく、強力も比較的劣るのが最大の欠点です。
混紡比は、20%から90%ぐらいまでの比率です。
アルパカ (Alpaca)
アルパカは、ペル-・ボリビアを中心としたアンデス山脈の高地に 生息しているラクダ類リャマ科の動物です。
南米ペルーの中部から南部ボリビア等に分布、海抜3650メートル(12000フィート)以上の高地に生息、アルパカの繊維の 手ざわりは滑らかで、強力と絹状の光沢があり繊度も揃っています。
毛の色は、グレ-(20%)・濃黄褐色(14%)が多いのですが、 他には、白(12%)・黒(10%)・ブチなどがあり、約20色に 分類されます。
生後一年位で刈り取ったベビーアルパカは最良のものといわれて います。
従って染色して使うよりも、生の色を調合して使う事が多いようです。
アルパカの毛は、ほとんどペルーでトップ加工して取引されています。
品質としては、ベビー・スーリー・ファイン・スタンダードの 4種類に分類されています。
繊維の表面はきわめて平滑で、スケ-ルはかすかに見られます。
クリンプはほとんどなく、太さは0,03㎜~0,035㎜位、 長さは普通10~23㎝位です。
モヘア (Mohair)
アンゴラ山羊から採った毛をモヘアといい、獣毛中では生産量も多く、わが国ではアンゴラに次いで多く加工されています。
毛は長く年2回採取できます。
長さは約100mm、年1回の採取では、150mm~300mmにも なります。
・・供給国と生産量・・・・
アンゴラ山羊は、小アジアのアンゴラ地方が原産地です。
カシミヤ山羊と先祖は同じです。
昔カシミール地方にいた山羊が、シルクロードを通って西方に移り、 トルコのアンカラ(旧アンゴラ)で繁殖したもので、環境の変化と 共に品種改良によって今日のモヘアになったと言う説が有力です。
モヘア(Mohair)は,トルコ語のMukhyarがなまった もので、「最上の厳選された毛」を意味するそうです。
その毛は長く揃った毛房からなっていますが、金属性の光沢があり 手触りもなめらかです。
特に子山羊の毛はキッドモヘアといい、他に比べて柔らかく・ 非常に光沢に富み、産毛量も少ない為最高級の原料の一種です。
これらのことから、 トルコが原産地と言われています
今日最大のモヘア供給国である南アフリカには、1838年移住民に 連れられて数頭のアンゴラ山羊が移住したしたのが最初で、 1880年までに約3000頭が輸入されたのが基になっています。
南アフリカのポートエリザベスの約400㎢の地域に、 約80%のアンゴラ山羊が集中して飼育されています。
南アフリカでこれだけ増殖したのは、気候的なこともありますが、 他に有望な産業もなく、政府が力をいれて優秀な人材を配置した からだと言われています。
第3位の供給国アメリカには、1849年米綿とのバター貿易で アンゴラ山羊が入植し、飼育に適したテキサス州で増殖し、 今日のテキサスモヘアになりました。
なぜテキサスかと言うと、アンゴラ山羊は、カシミヤ山羊と同様に、 灌木の芽を食べるため、広大で荒れたブシュユ地帯が必要で、 テキサスが最もその環境に適していたからです。
その他の産地としては、アルゼンチンとレソトがあります。
アルゼンチンは、1970年頃からの始まりのようです。
・・品質と特徴・・・・・
モヘアは、おもに産地と繊度によって分類されています。
最高級のものは、キッドモヘア(24、5μ)、μ)があり、 最も荒いものは、アダルトモヘア(40その繊維度1u毎に 価格が設定されています。
モヘアの特徴は、絹の様な光沢と毛足のながさでしよう。
反面欠点としては、羊毛よりも化学変化に敏感な為、 洗濯・染色・漂白などの加工工程が難しい事です。
用途としては、夏の服地・ニットセーター・意匠糸等に 利用されています。